【あだち探訪】「5つの時代を通して楽しむ西新井大師 街めぐり」

  • 2017年11月20日
  • 2022年1月5日

大師前駅

東京都足立区と聞いて、連想することはなんでしょうか?
昭和以降の下町という印象も強いかと思いますが、今回紹介する西新井大師周辺は、歴史も古く江戸時代や明治時代創業のお店が多く存在します。近年では、新しい話題のお店もオープン。西新井大師のお膝元ならではのハイブリッドな参道カルチャーが形成されています。
今回は西新井大師の最寄り駅「大師前駅」周辺を紹介します。

100円あればずっと遊べる!親子2代で通える駄菓子屋「コスモ」

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まず多くのメディアや雑誌に取り上げられ、一部の好事家から全国的な知名度を誇っている駄菓子屋「コスモ」を紹介します。

「コスモ」は、東武大師線「大師前駅」から徒歩で約10分、約1kmの場所にあります。環七通りから本木新道に入り、ずーっとまっすぐ進みます。

昭和の街並みが残る本木新道は、喫茶店や電気屋、スポーツ用品店、ミシン屋などレトロなお店が点在しており、昭和のノスタルジーをたっぷりと感じられるはずです。
さらにしばらく行くと、右手に“大黒屋”と書かれた黄色い看板が見えます。その看板の手前の小道を右折すると、目的の駄菓子屋「コスモ」があります。

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店内に入ると、懐かしい駄菓子で棚が埋め尽くされています。
梅ジャム、ココアシガレット、糸ひきあめ、チョコバット、寒天ボー、蒲焼さん太郎、酢だこさん太郎……目の前に広がる宝石のような駄菓子に、100円玉を握りしめて、何を買うか悩んだ子供時代を思い出してしまいます。
きっと読者諸氏も、小さい頃の100円の使い道は、人生を左右してしまうくらいの大きな決断だったのではないでしょうか。

「この店は、35年前に始めました。子どもたちのために100円で思いっきり遊べる場所を作りたいってずっと思っていてね。ゲームもできる駄菓子屋さんにしたんだ」(店主:海野さん)

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店内には、駄菓子とともにプラモデルやファミコンソフト、ベーゴマなどのおもちゃ、そしてゲームの筐体(きょうたい)が所狭しと置かれています。「ストリートファイターⅡ」「ファイナルファイト」「メタルスラッグ」(30〜40代の男性にとっては感涙もの!)など当時のままの筐体で、どのゲームも10円で遊ぶことができちゃいます。

「ウチは35年前から1ゲーム、10円。最新のゲームを入れたときも最高で30円の設定でやっていた。他のお店だと50円や100円だけど、ウチなら10円で遊べるから、昔は店の外まで子どもたちの行列ができたよ」(海野さん)

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子どもにとって50円、100円は大金。放課後にお小遣いを握りしめて、コスモに集合する小学生の姿が目に浮かびます。

筐体が故障するたびに、ご主人自身で部品を購入して修理していたのですが、もはや部品が手に入らないものも多く、遊べないゲームが少しずつ増えてきているそうです。
もちろんいまとなってはメーカーでも修理はできません。

「蔵前の問屋街で部品を買っていたんだけど、問屋もどんどんなくなってきちゃってね。部品も古くて手に入らないから直せなくなってきたんだよ。10円でやっているとメーカーに修理を頼むと元が取れないから、買ったときから自分で直してきたんだけどね〜」(海野さん)

否が応でも時代の移り変わりを感じさせるエピソードではないでしょうか。
35年間、壊れては修理して、子どもたちのために10円で提供し続けてきた駄菓子屋「コスモ」。
取材日にも、小学生や家族連れのお客さんが遊びに来ていました。

「とにかく安く、楽しく遊んでほしいからさ。その代わり、全然儲からない(笑)。でも、いいんだ。俺がやっていて楽しいから!」(海野さん)

いまでは、昔に通っていた方がお子さんを連れて親子二代で遊びに来る方も多いそうです。足立区の一画には、まだまだ昭和がしっかりと残っています。

コスモ

住所:足立区興野2-22-20(MAP)

営業時間:午後2時~7時

まるで昭和からタイムスリップしたかのような10種類以上のガチャガチャと珍しいポッカの自販機が目印。
このポッカの自販機は、とある自販機マニアが取材にやって来たほどレアな年代物とのことです(稼働しているものは全国でも「コスモ」だけとの噂も!)。

大師前駅周辺は新旧が入り交じったミックス感が魅力

東武大師線「大師前駅」周辺の商店街を「西新井大師商栄会」と言います。
この商栄会には、3〜4代続く老舗から新感覚のスイーツが楽しめるカフェなどお菓子屋さんがたくさんあります。

大正11年創業。大師前で100年近く変わらぬ味を守る「かどや」

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かどや 足立区西新井1-7-12 (MAP)

大正11(1922)年創業の「かどや」は、現在は4代目と5代目で切り盛りする老舗の甘味・食事処です。
下町のイメージをそのまま具現化したようなレトロな店構えに思わず足が誘われます。

「かどや」の名物は、創業当時の味を守り続けている「今川焼き」(100円)。
生地はふんわりとしていて、あんこの甘さは控えめ。
西新井大師散策の食べ歩きにはもってこいです。
食事メニューは、まさに下町の定食屋さんといった風情。
自家製麺を使用した「焼きそば小」(350円)、ラーメン(500円)が特に人気が高く、ラーメンはあっさりとした昔ながらの中華そば。
青のりがかかっただけのシンプルな焼きそばは、テーブルに用意されている特製ソースをお好みでかけていただきます。
雰囲気も値段も、まさに昭和初期の面影を残した貴重なお店です。

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豆の専門店!約200種類の商品がズラリ!

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まめ屋 足立区西新井1-9-13 第二たぐちやビル 101(MAP)

西新井大師の山門近くにある豆の専門店「まめ屋」さんは、日本の伝統的な豆菓子と現代的にアレンジした豆製品が人気。
あまなっとう、まめ菓子、生まめなど約200種類の商品のなかで1番人気は、「きなこまめ」(390円)。
ふっくらとした大粒の花豆にきなこがまぶされており、お茶との相性が抜群。

またお酒のおつまみやちょっとしたお菓子で人気なのが「ふらいびーんず」(280円~)。
「黒胡椒風味」「わさび風味」「マヨネーズ風味」など晩酌のおつまみにピッタリの商品もたくさん!

全商品試食が可能なのですが、これが非常に危険。あっちをポリポリ、こっちをポリポリと試食を始めると、止まらないのです……。
後を引く美味しさとはまさにこのことでしょう。

伝統の味を守る煎餅。お店ごとの個性が光る

西新井大師の参道を、今川焼き、豆菓子で食べ歩きしていると、あることに気づくはずです。

「このままでは太るかもっ!?」

それも女性やダイエットをされている方には死活問題ですよね。
しかし、まだまだ大師前には美味しいものがたくさんあるんです!

「おせんべい屋がいっぱい!」

そうなのです。西新井大師近辺だけで、4店舗もおせんべい屋があるのです。
しかも、ほとんどの店が明治創業の長い歴史を誇り、手焼きで丁寧に焼き上げています。
むむぅ……こんな日はダイエットを忘れてしまうのが得策かもしれません。この商店街でおせんべいを扱っているお店は以下の4店舗になります。

・いずみや(足立区西新井1-7-12(MAP)
・すずきや
(足立区西新井1-5-10(MAP)
・浅香家 
(足立区西新井1-7-15(MAP)
・大澤商店
(足立区西新井1-6-4(MAP)

一口におせんべいと言ってもそれぞれ特徴があります。
「いずみや」も明治創業の老舗で、備長炭を使って1枚1枚丁寧に焼き上げる手焼きのおせんべいは絶品です。
一文銭に見立てた3cm四方のおせんべいや、醤油味の草加煎餅、堅焼きに塩味の揚げ煎餅など種類豊富なおせんべいは、丸や四角のガラスケースに入れられています。
ブランドのショウケースと表現すると大げさですが、庶民的なおせんべいがガラスケースに入っていると輝いて見えてきます(味も素晴らしい!)。

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「すずきや」は、おせんべいと“あるもの”を一緒に売っています。
それはなんでしょうか?

それはダルマ。
なぜ、ダルマとおせんべい?と疑問が湧きますが、もともと西新井大師の参拝客とともに発展した街であることを考えれば、合点がいきます。
ダルマは昔から参拝客に人気の縁起物。
そして、歩きながら食べられるものという組み合わせが好まれました(いまほど道は整備されてなく、バスや鉄道もありませんでした)。
西新井大師に参拝し、縁起がいいダルマやおせんべいをおみやげに買う。
帰路の途中で、おせんべいを食べるなど、そういう参拝客の需要があったと思われます。

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そして「浅香家」では、「馬目焼」(1枚200円)と呼ばれる堅焼きのおせんべいが名物。
他のせんべいと比較するとずっしりと重く、ぎゅーっと中身が詰まっていることがわかります。
そして、本当に堅いです。
しかし、旨味も凝縮され、食べごたえも抜群。歯が健康な方は、ぜひ「馬目焼き」を試してください。

「大澤商店」は、おせんべいと飴のお店。金太郎飴や七五三の千歳飴など色とりどりの綺麗な飴と手焼きのせんべいを販売しています。

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ぜひ、西新井大師に訪れた際には、おせんべいの食べ歩き、食べ比べをおすすめします。

すると、あることに気づくはずです。

「このままでは太るかもっ!?」

でも、ぜひ大師前に来たならば、美味しいものを食べ尽していただきたいのです。だって、まだ紹介は続きますし。

草団子、右から食べるか、左から食べるか

清水屋 足立区西新井1-9-11(MAP)
清水屋 足立区西新井1-9-11(MAP)
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中田屋 足立区西新井1-5-12(MAP)

多くの人西新井大師で連想するのが名物・草だんごでしょう。
参道から西新井大師の山門に向かうと、

「草だんご、いかがですかー!」

と、その直前で左右から大きな声で呼び込みをされます。間違いなくされます。

右から聞こえる声は「中田屋」。
左から聞こえるのは「清水屋」。

どちらも絶品の草だんごで有名な伝統あるお店です。両店とも江戸時代から続く名店。

左右から威勢のいい声をかけられると、まず多くの人はどちらかで試食をします。
そして、心の中ではもう1店舗も試食しようと思うのですが、いいタイミングでお茶まで出してくれます。
憎い心遣いです。また草だんごとお茶の組み合わせが、本当に絶妙なのです。
ホッと一息つきながら、いい笑顔で思わず「一箱ください」と言ってしまうのです。
しかし、誰も損をしません。本当に美味しい草だんごですから。

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両店ともに本当に美味しいのですが、ちょっとした違いはあります。
それはご自身でぜひ確かめていただければと思います。
草だんご、あなたは右から食べるか?それとも左から?(山門から見ると左右は逆になりますよ!)

草だんごは、疫病が流行った際に、弘法大師が草だんごの原料であるヨモギを病人に煎じて飲ませたところたちまち治ったという伝説が由来とも言われています。

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まとめ

大師前
今回は、大師前周辺の楽しみ方として、お菓子をテーマにして幅広くお店を紹介しました。
紹介しただけでも、江戸、明治、大正、昭和、平成と、お店の創業年が5つの時代にまたがっているのです。
“新旧が入り交じる”と一言で片付けてしまうのは簡単ですが、大師前駅周辺は実に長い歴史を誇り、様々な要素がミックスされた興味深い街だとおわかりいただけたのではないでしょうか。

さて、次回はいよいよ西新井大師の魅力に触れていきたいと思います!

>>前回「日本でも珍しい要素がいっぱいの電車!「東武大師線」は、今日も下町を元気に走ります」

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